「ボーイ・フロム・オズ」(13時半の部、青山劇場)観劇。主人公ピーター・アレンを演じる坂本昌行から目が離せなかった…。昨年の初演の際にも好印象を抱いたのだけれども、今回、力みや気負いが抜け、“坂本昌行”を超えた一人の人間として、アレンが生きた悲しみと歓びに、本当に自然に寄り添うように舞台に存在している。だから、オープニング・ナンバーから歌の説得力が格段に違う。昨年はかなりテンションを上げて頑張っていたように見えた客いじりも、今年は実に落ち着きつつも軽妙で、だからこそ、人生で出会った人々を心から愛したアレン自身の想いを自然と映し出す行為となっている。そんな客いじりの際の言葉の端々にもこめられたユーモアとは、人間にとって苦悩多き人生をやり過ごす最良の方策に他ならないことが、その演技から痛切に伝わってくる。人生の物語が終わり、せつなすぎる幕切れに、「せめて、にぎやかに」と華やかなフィナーレへとなだれこむ、その悲しみと歓びのあわいにこそ、ピーター・アレンは確かに生きていたのではなかったか(ここで流れるナンバーが、「♪あの子が微笑めば/心はリオへと飛ぶ(中略)やっとつかんだ自由/なんて歓び!」なる歌詞の”I Go To Rio”というあたり、このミュージカルは反則的に巧い。愛する人の微笑みだけで南の楽園へと飛んでいけてしまう超絶的な無邪気、その無邪気の裏に隠された深い悲しみが、人の心を打たずにおれようか)。取り巻くキャストもそれぞれキャラクターにはまっていて楽しいが、なかでも、今陽子扮する母マリオンの愛がしっとりとアレンの人生を包みこんで◎。
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