藤本真由オフィシャルブログ

残像〜「ラプソディ」の荒井祐子[バレエ]
 7月のKバレエカンパニー「トリプル・ビル」の公演で、荒井祐子は伊坂文月とペアを組んで「ラプソディ」を踊った。振付はフレデリック・アシュトン、来年3月にKバレエで上演される「バレエ ピーターラビットと仲間たち」の振付家でもある。ラフマニノフ作曲の「パガニーニの主題による狂詩曲」を用いたこの作品に物語はなく、音楽にのって超絶技巧が展開されてゆく。音楽を観る喜びがそこにはある。
 5月の「白鳥の湖」以来、私は勝手に荒井祐子を美の同志だと考えている。日本の女の子には日本の女の子の美がある。その美は誰より、日本の女の子同士で認め合うことで、さらに確かなものとなり、磨かれてゆく。私はそんな活動を、宝塚歌劇を観、評論することで、愛する宝塚歌劇の仲間たちとずっと続けてきた気がする。そして、今ここに、新たなる分野に新たなる仲間を見出したのだ。私にとって最高のバレエ・ダンサーの一人に。荒井祐子が輝く瞬間が好きだ。ひときわ大きく見える瞬間が好きだ。細やかにステップを刻む瞬間が好きだ。彼女の美しい心がその踊りに発露する瞬間が好きだ――。
 「ラプソディ」では、振付を正確にこなす、そんな次元を超えて、音楽や振付に対し、ちょっとしたニュアンスやしぐさなど、彼女ならではの解釈がその身体で示されるたび、――、…ああ、彼女はこのようにこの美しい楽曲を聴いているんだな、このように聴けるなんてうらやましいな、そう思う瞬間が何度もあった。
 第18変奏、アンダンテ・カンタービレ。二人は互いの回りを舞う。――その情景がいつまでも心から離れない。今や私の心の中で、荒井祐子がくるくる、くるくると回っているのである。――永遠に!

(7月17日14時、オーチャードホール)