藤本真由オフィシャルブログ

 宝塚歌劇花組公演「Ernest in Love」(日生劇場)12時の部観劇。めちゃめちゃ楽しかった! まず、耳なじみよくキャッチーで、口ずさみながら帰れる音楽が非常にグッド。オスカー・ワイルドの戯曲がもとになっているだけあって、ウィットの利いたセリフ多し。オーケストラがオランジェリーの中で演奏しているのもしゃれた感じ(上下する舞台装置は、何となくウエストエンドの「メリー・ポピンズ」を思い出した)。メイン・キャストの四人も◎。樹里咲穂は陽気で明るい持ち味を発揮して、男役の集大成となる舞台。蘭寿とむもとぼけた感じが実にチャーミング。遠野あすかは、本公演よりもリラックスした感じでヒロインを務めている印象。桜一花はおしゃまで、お人形のようにかわいらしい。男役二人のかけあいはもちろん、娘役二人のかけあいも楽しくて、他の舞台でももっと娘役を活躍させてほしいし、こんな感じの明るくて楽しくてしゃれた作品をもっと観たいものだと思った。ちなみに、メイン四人の取材記事を「Top Stage」Vol.24で手がけているので、ご興味のある方はバックナンバーで是非。

 銀座を散歩した後、日比谷で取材を一本。
 「蜘蛛女のキス」(アートスフィア)初日19時の部観劇。“役者”今村ねずみは声が魅力的だなと改めて実感。バレンティン(山口馬木也)の世話をあれこれと焼く姿に母性愛を感じた。母に愛された記憶しかないから、愛するとなると母が自分にしてくれたように人に接するしかないのかも…と思うと、これまでの彼の孤独が胸に迫ってきてじーんとした。
 それにしても、二本ともおいしそうな食べ物の話多し。「Ernest in Love」では紅茶、マフィン、それに何といってもキュウリ・サンド! 日生劇場で食べたサンドウィッチにはキュウリが入っていないのが残念(?)。パクパク食べつつお芝居しなくちゃいけない蘭寿アルジャノン、大変そう。「蜘蛛女のキス」は監獄が舞台だから、食べ物の話は切実な問題として登場するのだけれども、それにしてもバレンティンが床に叩きつけてしまう“チェリー・マデイラ・ケーキ”は魅力的な響き。どちらの芝居も、できれば空腹では行かないことをおすすめします。

 昼、新国立劇場にて、10月末からのバレエ公演「カルミナ・ブラーナ」でソリストを務める湯川麻美子さんの取材。非常に感性豊かでお話の楽しい方で、生き生きとした、人間的魅力にあふれる踊りの秘密が理解できた気分。注目のイギリス人振付家デヴィッド・ビントレーが手がけた「カルミナ・ブラーナ」では、“運命の女神”としてセクシーで力強い踊りを披露してくれるとか。作品のビデオをちょこっと見せていただいたのだけれども、かなりコミカルな部分もある現代的演出で、迫力ある音楽と一体となったスケールの大きな舞台が期待できそう。取材の後、楽屋食堂にお邪魔したところ、9月半ばからのオペラ公演「ニュルンベルクのマイスタージンガー」のリハーサル風景をテレビでちらっと見ることができた。こちらもかなり気合の入った舞台装置が組まれているようで、公演が楽しみ。

 18時半より、宝塚歌劇雪組新人公演「霧のミラノ」(東京宝塚劇場)観劇。全体的に手堅くまとまった、見応えのある新人公演だった。初主演を務めた凰稀かなめは、本役・朝海ひかるのシャープで研ぎ澄まされた印象のロレンツォとはまた違う、彼女ならではの魅力を生かした役作り。いいところのおぼっちゃまらしい鷹揚さと包容力があり、好感が持てた。晴華みどりも新人公演初ヒロインの重圧を感じさせない落ち着いた舞台だったが、もっと大人っぽい人物造形を試みた方が、彼女自身の持ち味には合ったように思う。貴城けいの役を演じた緒月遠麻が、難しい役柄を説得力のある演技で見せて◎。山科愛はさすがの存在感を放つコメディエンヌぶり。舞咲りんも、歌、ダンス共に溌剌とした魅力があった。専科生の役を受け持った神麗華、奏乃はるとも、新人公演らしからぬしっかりとした演技を見せていた。

 夜、都内ホテルにて宝塚「ベルサイユのばら」制作発表会。
 会場に入ると、本日出席する、主演コンビと特出組、合わせて11人の皆さんの扮装写真の等身大のパネルが並べられていて、気分を盛り上げてくれる。
 まず初めに、今回の公演のために撮影したという映像の放映があり(映画「オペラ座の怪人」を思わせるような、幻想的な雰囲気の映像)、皆さんが入場。理事長や演出家、原作者の池田理代子氏などを含めて総勢16人が壇上に並ぶため、用意されたテーブルが長い! ちなみに今回のポスターは池田氏のデザインによるもの。31年前のこの日に初演がスタートしたことなど、作品関連の話、質疑応答を経て、劇中歌の披露。
 湖月わたるさんが「愛の面影」、朝海ひかるさんが「我が名はオスカル」、春野寿美礼さんと瀬奈じゅんさんが「白ばらのひと」を歌い継ぎ、最後に全員で「愛あればこそ」を合唱。メイクも衣装もなしなのに、歌と表情だけでフェルゼンの想いがひしひしと伝わってくる湖月さんの「愛の面影」、まるでそこにオスカルその人が存在しているかのような朝海さんの「我が名はオスカル」と、今の時点ですでにしっかりと役作りができている様子。アンドレの秘めた想いを、しっとりと歌い上げる春野さん、高らかに告げるかのような瀬奈さん、個性の異なるそれぞれの「白ばらのひと」も味わい深い。歌の後、皆さんが抱負を一言ずつ。全員が壇上に揃うと、カメラのフラッシュが激しく光り、目がチカチカしそうになるほどで、「ベルばら」への注目度の高さを改めて実感。
 マリー・アントワネット生誕250周年記念公演ということで、彼女が作曲した楽曲も、星組では一場面で、雪組ではフィナーレ・ナンバーとして登場の予定。雪組の「オスカル編」では、オスカルとロザリーの心の交流をこれまで以上にじっくり描いていくとか。役替わりの話題も含め、公演がますます楽しみに。

 最近出版された「少女歌劇の光芒」(倉橋滋樹/辻則彦著、青弓社)という本が非常におもしろく、一気に読んだ。宝塚少女歌劇団の隆盛を受け、大正・昭和初期に相次いで創立された日本各地の“少女歌劇”を追ったもの。そういう団体がいくつかあったことは知っていたが、これほどまでに各地に存在していたとは驚いた。横浜、金沢、大分…。活躍の場も、遊園地、料亭、百貨店など実にさまざま。宝塚の存在に刺激を受け、大いに参考にしながらも、それぞれ工夫を凝らして上演していた様子がうかがえて、思わずタイムスリップして日本全国少女歌劇めぐりをしたくなってくる。
 かつてライバル的存在だったOSKも経営母体を離れ、SKDも解散した今となっては、残るは宝塚歌劇団ただ一つ。少女歌劇の本家本元のみが90年の歴史を重ねてきた理由はいろいろあるだろうが、節目節目で「ベルサイユのばら」や「エリザベート」のように特色を最大限生かせる演目に出会ってきたということは大きいと思う。その意味で、「ベルサイユのばら」の再演にはやはり重みがある。

 夜、またまた高円寺阿波おどりへ。今日見られた十あまりの連(団体)の中では、老舗の“いろは連”が、そろった踊りの美しさ、ダイナミックなフォーメーションの変化などで見応えがあった。

 宝塚歌劇雪組公演「霧のミラノ」「ワンダーランド」(東京宝塚劇場)13時半の部観劇。芝居作品「霧のミラノ」は、ドレス姿の令嬢たちが舞台上を埋め尽くしたり、主演コンビ朝海ひかる&舞風りらが軽やかにデュエット・ダンスを踊る幕開きが華やかで、これぞ宝塚の醍醐味という感じ。作品には全体的にもうちょっとミラノの香りがほしい。スカラ座のオープニングの場面があるのだろうと楽しみにしていたら、結局なかったし。
 ショー「ワンダーランド」は、久々に出た! 「タカラヅカ」連呼の自画自賛(?)テーマ・ソングあり。日本でそんなことができるのは宝塚だけだし(世界でも?)、たまに聞けると楽しい。宝塚大劇場に行きたくなるというか、東京にいながらにして宝塚大劇場に行った気分になれるというか、そんな感じの作品。
 芝居ショー共々、朝海ひかる、貴城けい、水夏希、三者三様のさまざまな魅力が堪能できる公演。舞風りらのダンスは相変わらず、ほれぼれするほど手足の運びが美しい。スペシャリスト系では、凄みのある美穂圭子の歌と、男役の色気たっぷりの麻愛めぐるのダンスが◎。いぶし銀の専科陣が活躍しているのもうれしく、メル・ブルックスの「宝塚で『プロデューサーズ』をやってほしいなあ〜」という願いがかなったとしたら(四月に取材したとき、本人が言っていたのだ)、日本版で松金よね子が演じているホールドミー・タッチミーの役は絶対、鈴鹿照にやってほしいと思った。あと、桑野信義が演じているフランツ・リープキンは、汝鳥伶。
 終演後、演出家陣が参加しての懇親会。

 丸の内近辺をしばし散策した後、下北沢へ。ヨーロッパ企画「サマータイムマシン・ブルース2005」(下北沢駅前劇場)19時半の部観劇。これから映画版も公開されるというタイムマシンもの。
 タイムスリップして小学生時代の自分の母親と出会う少女が出てくる童話が、子供のころ大好きだった私。私も母親と同じ小学校に通っていて、母が使っていた木造校舎がまだ残っていたので(私の時代にはもう使われてはいなかったのだけれども)、その校舎の物陰から小学生の母親が出てきたらおもしろいのになあと、よくそんなことを考えていた(夢見がちだったもので)。今もしタイムマシンがあったら、昭和初期にタイムスリップして、レビュー黄金時代の宝塚の「モン・パリ」や「パリゼット」といった名作を、亡くなった祖母と一緒に観に行ってみたい。

 宝塚歌劇星組公演「長崎しぐれ坂」「ソウル・オブ・シバ!!」(東京宝塚劇場)13時半の部観劇。初日の幕が開いてすぐに一度観劇していて、今回が二度目。この公演で一番気に入っているのは、ショーの方の、湖月わたるさんと白羽ゆりさんが一瞬一緒に踊るシーン。すごく息が合っていて、主演コンビとして登場する次の舞台(9月下旬からの全国ツアー公演)が楽しみ。先日、お二人そろっての取材をしたのだけれども(7月29日「イギリスに行って来ました」の最後、「夕方、日比谷方面で取材を一本」とあるのがそうです)、そのときもとてもいい雰囲気でした。ちなみにこのときの原稿は、9月27日発売の「Top Stage」Vol.27に掲載される予定。

 「世界の中心で、愛をさけぶ」(世田谷パブリックシアター)19時の部観劇。ベストセラー小説の舞台化。文化祭で「ロミオとジュリエット」の舞台をやることになって…という設定に、半年間だけ演劇部に在籍していた高校時代を思い出してしまった。文化祭の舞台、好きだった人を一生懸命誘って観に来てもらったりして…。ああ、若さって甘酸っぱい。